魔帽子の少年と銃を所持している少年のある日
ある日、小さな少年がいました。
小さな頭の上に大きな魔帽子をかぶっています。
小さな手には、杖が握られています。
もう一人、その小さな少年より少し年上の少年がいました。
腰には一丁の銃と、それをしまっておくホルスターがあります。
その少年が旅に出てからある日のこと。
人の気配がして、後ろに振り向きました。手を銃のグリップに握らせます。
その頃の最新型だったそれは、安全装置が付いています。
装置をかけたままだと撃つことは出来ないので誤って引き金を引いても大丈夫です。
グリップを握ったまま、安全装置をかけたままで振り向くと小さな少年がいました。
先ほど書いた、魔帽子の少年です。
「!」
魔帽子の少年は銃を見て怯えだします。
銃のグリップを握っていた少年は、
魔帽子の少年の様子を見るとグリップから手を離しました。
「君はどうしたの?」
最初に声を発したのは、銃を所持している少年でした。
「…………」
魔帽子の少年は答えようとしません。
どう言えば良いのか、迷っているようです。
森の中に二人はいました。
二人とも、何故ここに居るのか質問をしてもおかしくはないです。
「えっと……」魔帽子の少年は何とか口を開こうとします。
「あ、無理に答えてくれなくてもいいよ」
「……」口を小さく開いたまま、魔帽子の少年は黙り込みます。
そのまま沈黙が流れてから、
「もしかして迷子?」
「違い……ます」
銃を所持している少年が不思議そうな顔をしました。
「え?」
「あ、いや……その、」
魔帽子の少年は言葉に詰まっています。
ふと、銃声が二人の耳に聞こえました。
魔帽子の少年は銃を所持している少年の銃を見ます。
目の前の人は撃っていない、と分かると安心した顔を見せました。
「……ほら、危ないよ」
「そう……ですね。じゃあここから、離れます」
軽く礼をした魔帽子の少年は、すぐに走って去っていきました。
銃声が聞こえた森の奥へ。
「あ、ちょっとお前……!」
銃を所持している少年は、魔帽子の少年を呼び止めようとしました。
それでも魔帽子の少年は止まりません。
銃を所持している少年が追いかけ始めました。
銃を所持している少年が魔帽子の少年にあともう少しで追いつく、と思った時です。
魔帽子の少年は止まって、息切れをしていました。
目の前には一人の大人と死体があります。
大人の男は両手に一丁ずつ銃を持っていました。
どちらとも旧式の物で、安全装置は付いていません。
死体は人ではなく、ドラゴンでした。この世界ではリュカ族と呼ばれている種族です。
紺色のような目と対照的に、紅色の血が目立っています。
男のスーツのようなズボンのすそと、靴には少し返り血がついています。
「また殺したんですか?」
魔帽子の少年が、男の人を見上げながら、にらみながら質問しました。
「お、久しぶりだね。うん……また殺した」
「未だ、あの時にあなたが言った言葉の意味が分かりません」
その言葉に対して、男の人が何か言おうとしました。その時に、
「久しぶり」
銃を所持している少年もにらみながら、男の人にそう言いました。
冷静な声です。
「おや……」
男の人は珍しそうな声を出してから、
銃を所持している少年の名前を確認しました。
「×××かい?」
「……ああ。まさか俺の名前を覚えてくれているとは思わなかった。お前は、」
「もし『違う』って言ったら?」
「だったら俺の名前は知らないはずだ。それにまだ何も言っていない」
「ははは、そうだね」
「親……父、だよな?」
「ああ……そうだ。私は君のお父さんだ」
男の人は微笑をしてみせて、
「今、こんなことをやっていても×××の父だ」と続けると、
銃を所持している少年の目が鋭くなりました。
魔帽子の少年はぽかんと口を開けたまま、その目に怯えています。
その目から逃れるためなのか、
紺の目と小さい白い羽を持っていたドラゴンへ近づきました。
小さいドラゴンは空を仰ぐように、血を流して息絶えていました。
魔帽子の少年はつぶやきます。
「リュカ族……」
無意識に手を握っていたことに気付いて、強く握りました。
そのままどうしたら良いか分からずに、無表情でしばらく握り続けていました。
銃を所持している少年が、男の人に言いました。
腰にある銃のグリップを握ったままで。
「“リュカ族殺し”という仕事ですか」
「そうだ。仲間と離れ離れになって、孤独感プラス早死にだ。
それならいっそ、孤独感に襲われてしまう前に楽にしてあげる。
お父さんは、この仕事に誇りを持っている」
「保護するっていう仕事もあるけど?」
「いずれ死ぬのならそんなことをやっても、意味の無いことだ」
銃のグリップを握ったままで、
銃口を向けようとしない少年は返す言葉が見つからずに黙っています。
その時、魔帽子の少年が静かに言いました。
息絶えてしまった、一人のリュカ族の手を握ったままで。
「何を言っているんですか? 生きていれば、楽しいことだってあります。
幸せだってあります。いつ死んでしまっても。
実際に、あなたと僕が知っているリュカ族の一人はそうでしたよ」
「でもね、皆がそう、ってことは無いんじゃないかな?」
「……そうかもしれませんね。
けれど生きること、というのは権利ではなくて義務なんです。
義務、という物をあなたが壊す権利等は、ひとかけらも無いと思いますが?」
「やっぱり、君には何ひとつ分かってもらえないのかな?」
「そうですね」
「じゃあさ、生きているから分からないのかな?」
「……それは、あの世へ行ってみたら分かるかもしれませんね」
魔帽子の少年の目には銃口が写っていて、口がそう動いていました。
逃げ出したい気持ちはありますが、
恨み等の感情をぶつける機会を逃すのも気は進みませんでした。
かと言って、機会を逃さずに生き延びる方法は見つかりません。
それに、もし逃げ出したとしても発砲される可能性が高いです。
どっちにしろ足はすくんで震えていました。
男の人は無表情で、一つの銃口を魔帽子の少年に向けたままグリップを握っています。
人差し指を引き金にかけた瞬間、発砲音が聞こえました。
男の人は撃っていませんでした。
旧式の、一丁の銃が土の上へ落ちました。
その銃の持ち主が発砲した人をにらむように見ます。
にらまれている、
銃を構えている少年も一丁の銃を落とした男の人をにらむように見ています。
銃を所持している少年が撃った弾は男の人がグリップを握っていた銃の、
バレルの部分に当たっていました。
バレルの部分に強い力が加わった銃は、するりと男の人の手から落ちました。
怯えていた魔帽子の少年は、落ちている銃へ杖を向けました。
すると、どこからか出てきた丸い水の固まりは銃をぬらして、銃口に入り込んでいきます。
男の人は驚いた顔を見せてからすぐに、
もう片方の手に持っていた銃の口を魔帽子の少年に向けました。
複雑そうな顔をしながら。
「水がこの中に入ってしまったら、もう使えねぇじゃないか……」
魔帽子の少年は慌てて杖を男の人へ向けて大きな水の固まりを出しました。
その水の固まりの真ん中を、銃弾は突き破りました。
「な、」
どうしたら良いのか、魔帽子の少年は分かりませんでした。
目を強くつむって、息絶えてしまった一人のリュカ族の手を更に強く握りました。
銃弾は、魔帽子の少年に当たらずに消えました。
魔帽子の少年が手を握っているリュカ族の、
紺色の目と同じ色をしたバリアが魔帽子の少年を包んでいます。
「え……?」
魔帽子の少年は、手を握っているリュカ族を見つめて微笑しました。
銃は連射されましたが、全てバリアに吸い込まれるように消えていきます。
銃を所持している少年は男の人に再度、銃口を向けました。
その少年の気配に気付いた男の人は、銃口の向きを変えます。
男の人が先に撃ちました。
銃を所持している少年は一、二歩だけ動いて銃弾を避けました。
その少年は二発、続けて撃ちます。
男の人も一、二歩動いて避けました。
二人とも、相手が撃ってくるところが分かっているようです。
「もし、こんな私でも生きる義務があるとするなら、
私を殺そうとしている君は一体何者なのかな?」
男の人は銃の撃ち合いをしている最中に、相手の少年へ質問しました。
「さぁ、自分でも分からないです。ただ、それはこっちの台詞でもおかしくない。
俺はあなたの行為が許せないからこんなことをやっている。何者だとかは関係無い」
その答えに対して、質問した人は棒読みのように「ふーん」とだけ言いました。
銃を所持している少年は、男の人の残像に騙されました。
少年が撃った一発が男の人の残像をかき消します。
「…………」
少年は後ろに振り返りました。
目の前に銃を突きつけられていて、銃口からは銃の中身が見えています。
男の人は手を動かそうとしません。
「撃たないのか、撃てないのかどっちだ?」
銃を向けられている少年は挑発するように質問しました。
男の人は残念そうな顔で答えます。
「……撃てない」
「何故だ?」
「手足が動かないんだ」
自分の手足が動かない理由は分かっています。
魔帽子の少年が男の人に杖を向けていました。
杖を男の人に向けている少年は、時空魔法で男の人の動きを止めていました。
「相手の目に錯覚させても無駄でしたね、親父。
気迫で、相手の目に残像を作らせるというフェイント。合ってますか?」
「……ははっ、正解だ」
その男の人の言葉を聞いた、銃を所持いている少年は銃を構えなおします。
「……俺からの最後の一言。俺は親父を、殺すことはしませんよ」
そう言った少年は、ゆっくりと引き金を引きます。
男の人に当たった弾は、銃弾そっくりに作られたゴム弾でした。
それが男の人のおでこに当たるとポトリ、と落ちて気絶させました。
男の人は仰向けに倒れました。
「逃げるよ、君」
力が抜けてしまった魔帽子の少年は我に返ります。
「あ、はい」
手をつないでいたリュカ族の手をゆっくりと離しました。
その後、土に埋める時間は無かったので魔法で小さな火を点けました。
紺色のバリアはゆっくりと消えていきます。
森の入り口まで、二人は来ていました。
銃を所持している少年が、魔帽子の少年の名前を聞きます。
魔帽子の少年はこう答えました。
「えっと……本当は△△△、というんですけど……□□、でいいですか?」
「□□?」
「はい。少し訳ありで」
「分かった。じゃあ、またいつか」
「え? あ……はい。そうですね」
「あの時、最初から魔法を使ってくれたら良かったのに」
銃を所持している少年はわざと不満そうな声でそう言います。
魔帽子の少年は、苦笑しながら言いました。
「……すいません。怖かったんです。失敗する可能性もあったんで」
「ふぅん。……じゃあ」
「あ、ちょっと待って下さい、助けてくれてありがとうございました。×××さん」
「いいえ、こちらこそ。□□君」
「それじゃあ、お元気で」
「ああ」
気絶していた男の人が目を開けました。
骨だけになっている一人のリュカ族が見えています。
魔帽子の少年が点けた火はもう消えていました。
男の人の手に握られていた、一丁の銃は息子さんに盗まれていました。
小さな頭の上に大きな魔帽子をかぶっています。
小さな手には、杖が握られています。
もう一人、その小さな少年より少し年上の少年がいました。
腰には一丁の銃と、それをしまっておくホルスターがあります。
その少年が旅に出てからある日のこと。
人の気配がして、後ろに振り向きました。手を銃のグリップに握らせます。
その頃の最新型だったそれは、安全装置が付いています。
装置をかけたままだと撃つことは出来ないので誤って引き金を引いても大丈夫です。
グリップを握ったまま、安全装置をかけたままで振り向くと小さな少年がいました。
先ほど書いた、魔帽子の少年です。
「!」
魔帽子の少年は銃を見て怯えだします。
銃のグリップを握っていた少年は、
魔帽子の少年の様子を見るとグリップから手を離しました。
「君はどうしたの?」
最初に声を発したのは、銃を所持している少年でした。
「…………」
魔帽子の少年は答えようとしません。
どう言えば良いのか、迷っているようです。
森の中に二人はいました。
二人とも、何故ここに居るのか質問をしてもおかしくはないです。
「えっと……」魔帽子の少年は何とか口を開こうとします。
「あ、無理に答えてくれなくてもいいよ」
「……」口を小さく開いたまま、魔帽子の少年は黙り込みます。
そのまま沈黙が流れてから、
「もしかして迷子?」
「違い……ます」
銃を所持している少年が不思議そうな顔をしました。
「え?」
「あ、いや……その、」
魔帽子の少年は言葉に詰まっています。
ふと、銃声が二人の耳に聞こえました。
魔帽子の少年は銃を所持している少年の銃を見ます。
目の前の人は撃っていない、と分かると安心した顔を見せました。
「……ほら、危ないよ」
「そう……ですね。じゃあここから、離れます」
軽く礼をした魔帽子の少年は、すぐに走って去っていきました。
銃声が聞こえた森の奥へ。
「あ、ちょっとお前……!」
銃を所持している少年は、魔帽子の少年を呼び止めようとしました。
それでも魔帽子の少年は止まりません。
銃を所持している少年が追いかけ始めました。
銃を所持している少年が魔帽子の少年にあともう少しで追いつく、と思った時です。
魔帽子の少年は止まって、息切れをしていました。
目の前には一人の大人と死体があります。
大人の男は両手に一丁ずつ銃を持っていました。
どちらとも旧式の物で、安全装置は付いていません。
死体は人ではなく、ドラゴンでした。この世界ではリュカ族と呼ばれている種族です。
紺色のような目と対照的に、紅色の血が目立っています。
男のスーツのようなズボンのすそと、靴には少し返り血がついています。
「また殺したんですか?」
魔帽子の少年が、男の人を見上げながら、にらみながら質問しました。
「お、久しぶりだね。うん……また殺した」
「未だ、あの時にあなたが言った言葉の意味が分かりません」
その言葉に対して、男の人が何か言おうとしました。その時に、
「久しぶり」
銃を所持している少年もにらみながら、男の人にそう言いました。
冷静な声です。
「おや……」
男の人は珍しそうな声を出してから、
銃を所持している少年の名前を確認しました。
「×××かい?」
「……ああ。まさか俺の名前を覚えてくれているとは思わなかった。お前は、」
「もし『違う』って言ったら?」
「だったら俺の名前は知らないはずだ。それにまだ何も言っていない」
「ははは、そうだね」
「親……父、だよな?」
「ああ……そうだ。私は君のお父さんだ」
男の人は微笑をしてみせて、
「今、こんなことをやっていても×××の父だ」と続けると、
銃を所持している少年の目が鋭くなりました。
魔帽子の少年はぽかんと口を開けたまま、その目に怯えています。
その目から逃れるためなのか、
紺の目と小さい白い羽を持っていたドラゴンへ近づきました。
小さいドラゴンは空を仰ぐように、血を流して息絶えていました。
魔帽子の少年はつぶやきます。
「リュカ族……」
無意識に手を握っていたことに気付いて、強く握りました。
そのままどうしたら良いか分からずに、無表情でしばらく握り続けていました。
銃を所持している少年が、男の人に言いました。
腰にある銃のグリップを握ったままで。
「“リュカ族殺し”という仕事ですか」
「そうだ。仲間と離れ離れになって、孤独感プラス早死にだ。
それならいっそ、孤独感に襲われてしまう前に楽にしてあげる。
お父さんは、この仕事に誇りを持っている」
「保護するっていう仕事もあるけど?」
「いずれ死ぬのならそんなことをやっても、意味の無いことだ」
銃のグリップを握ったままで、
銃口を向けようとしない少年は返す言葉が見つからずに黙っています。
その時、魔帽子の少年が静かに言いました。
息絶えてしまった、一人のリュカ族の手を握ったままで。
「何を言っているんですか? 生きていれば、楽しいことだってあります。
幸せだってあります。いつ死んでしまっても。
実際に、あなたと僕が知っているリュカ族の一人はそうでしたよ」
「でもね、皆がそう、ってことは無いんじゃないかな?」
「……そうかもしれませんね。
けれど生きること、というのは権利ではなくて義務なんです。
義務、という物をあなたが壊す権利等は、ひとかけらも無いと思いますが?」
「やっぱり、君には何ひとつ分かってもらえないのかな?」
「そうですね」
「じゃあさ、生きているから分からないのかな?」
「……それは、あの世へ行ってみたら分かるかもしれませんね」
魔帽子の少年の目には銃口が写っていて、口がそう動いていました。
逃げ出したい気持ちはありますが、
恨み等の感情をぶつける機会を逃すのも気は進みませんでした。
かと言って、機会を逃さずに生き延びる方法は見つかりません。
それに、もし逃げ出したとしても発砲される可能性が高いです。
どっちにしろ足はすくんで震えていました。
男の人は無表情で、一つの銃口を魔帽子の少年に向けたままグリップを握っています。
人差し指を引き金にかけた瞬間、発砲音が聞こえました。
男の人は撃っていませんでした。
旧式の、一丁の銃が土の上へ落ちました。
その銃の持ち主が発砲した人をにらむように見ます。
にらまれている、
銃を構えている少年も一丁の銃を落とした男の人をにらむように見ています。
銃を所持している少年が撃った弾は男の人がグリップを握っていた銃の、
バレルの部分に当たっていました。
バレルの部分に強い力が加わった銃は、するりと男の人の手から落ちました。
怯えていた魔帽子の少年は、落ちている銃へ杖を向けました。
すると、どこからか出てきた丸い水の固まりは銃をぬらして、銃口に入り込んでいきます。
男の人は驚いた顔を見せてからすぐに、
もう片方の手に持っていた銃の口を魔帽子の少年に向けました。
複雑そうな顔をしながら。
「水がこの中に入ってしまったら、もう使えねぇじゃないか……」
魔帽子の少年は慌てて杖を男の人へ向けて大きな水の固まりを出しました。
その水の固まりの真ん中を、銃弾は突き破りました。
「な、」
どうしたら良いのか、魔帽子の少年は分かりませんでした。
目を強くつむって、息絶えてしまった一人のリュカ族の手を更に強く握りました。
銃弾は、魔帽子の少年に当たらずに消えました。
魔帽子の少年が手を握っているリュカ族の、
紺色の目と同じ色をしたバリアが魔帽子の少年を包んでいます。
「え……?」
魔帽子の少年は、手を握っているリュカ族を見つめて微笑しました。
銃は連射されましたが、全てバリアに吸い込まれるように消えていきます。
銃を所持している少年は男の人に再度、銃口を向けました。
その少年の気配に気付いた男の人は、銃口の向きを変えます。
男の人が先に撃ちました。
銃を所持している少年は一、二歩だけ動いて銃弾を避けました。
その少年は二発、続けて撃ちます。
男の人も一、二歩動いて避けました。
二人とも、相手が撃ってくるところが分かっているようです。
「もし、こんな私でも生きる義務があるとするなら、
私を殺そうとしている君は一体何者なのかな?」
男の人は銃の撃ち合いをしている最中に、相手の少年へ質問しました。
「さぁ、自分でも分からないです。ただ、それはこっちの台詞でもおかしくない。
俺はあなたの行為が許せないからこんなことをやっている。何者だとかは関係無い」
その答えに対して、質問した人は棒読みのように「ふーん」とだけ言いました。
銃を所持している少年は、男の人の残像に騙されました。
少年が撃った一発が男の人の残像をかき消します。
「…………」
少年は後ろに振り返りました。
目の前に銃を突きつけられていて、銃口からは銃の中身が見えています。
男の人は手を動かそうとしません。
「撃たないのか、撃てないのかどっちだ?」
銃を向けられている少年は挑発するように質問しました。
男の人は残念そうな顔で答えます。
「……撃てない」
「何故だ?」
「手足が動かないんだ」
自分の手足が動かない理由は分かっています。
魔帽子の少年が男の人に杖を向けていました。
杖を男の人に向けている少年は、時空魔法で男の人の動きを止めていました。
「相手の目に錯覚させても無駄でしたね、親父。
気迫で、相手の目に残像を作らせるというフェイント。合ってますか?」
「……ははっ、正解だ」
その男の人の言葉を聞いた、銃を所持いている少年は銃を構えなおします。
「……俺からの最後の一言。俺は親父を、殺すことはしませんよ」
そう言った少年は、ゆっくりと引き金を引きます。
男の人に当たった弾は、銃弾そっくりに作られたゴム弾でした。
それが男の人のおでこに当たるとポトリ、と落ちて気絶させました。
男の人は仰向けに倒れました。
「逃げるよ、君」
力が抜けてしまった魔帽子の少年は我に返ります。
「あ、はい」
手をつないでいたリュカ族の手をゆっくりと離しました。
その後、土に埋める時間は無かったので魔法で小さな火を点けました。
紺色のバリアはゆっくりと消えていきます。
森の入り口まで、二人は来ていました。
銃を所持している少年が、魔帽子の少年の名前を聞きます。
魔帽子の少年はこう答えました。
「えっと……本当は△△△、というんですけど……□□、でいいですか?」
「□□?」
「はい。少し訳ありで」
「分かった。じゃあ、またいつか」
「え? あ……はい。そうですね」
「あの時、最初から魔法を使ってくれたら良かったのに」
銃を所持している少年はわざと不満そうな声でそう言います。
魔帽子の少年は、苦笑しながら言いました。
「……すいません。怖かったんです。失敗する可能性もあったんで」
「ふぅん。……じゃあ」
「あ、ちょっと待って下さい、助けてくれてありがとうございました。×××さん」
「いいえ、こちらこそ。□□君」
「それじゃあ、お元気で」
「ああ」
気絶していた男の人が目を開けました。
骨だけになっている一人のリュカ族が見えています。
魔帽子の少年が点けた火はもう消えていました。
男の人の手に握られていた、一丁の銃は息子さんに盗まれていました。
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