第三十三話
「……私は、あの鍵を守るように言いつけられた人の十代目。だからここに居る。この建物に来る途中は都会だったでしょ? 私はあそこに住んでいて、時々ここに来ている。本当は鍵を守らなきゃいけないから、ずっとここにいなきゃ駄目だけど」
「俺達のようにこんな奥まで来る人はいない、と」
「そう。それで偶然、私がここに来た時間とあなた達が来た時間が被った」
そう言った女の人は続けて自分の名前をノタと名乗る。隣に居るのはガードマンだと言った。ヒドウ達の四人も自分の名前を言う。
ヒドウが剣と盾をノタに見せて、緊張している声で言った。
「この部屋に入る前、これらがあったんですけど何故あんな場所に?」
「ああ……その二つ? 適当に置いておいただけ。その二つは、雷の鍵を守ってきた人がずっと使ってきた物。でも私は時空魔法が使えるし、剣よりもこっちの短剣のほうが気に入っている。だから別に持っていっても構わない。雷の鍵を手に入れてからだったらね」
それを聞いたガードマンがノタに言う。
「お嬢様……!」
「何?」
「あれらも、鍵と一緒に受け継いできた物では……」
「いいのよ、もし鍵が無くなってしまうのだったら後はどうでもいい、私は使わないし」
「そう言われましても……」
「要らない物はどうなってもいいじゃない」
「……はい」
「そこの四人さん、面白い話でも聞く?」
ノタが楽しそうな、柔らかい顔で質問する。
スノフォとイニが同じような顔で質問に答えた。
「聞きたいですね」
ノタは少し、いきいきとした表情で喋り始める。
「――――――ナユさんはこの世界にはいなかった。存在していなかった。どういう経緯かは知らないけど、ディグバさんは悪者だという設定でこの世界に居る。あの扉を創ったのはディグバさんで、鍵を創ったのもディグバさん。あの扉を壊そうとしているのもディグバさん。理由は分からないけどね」
リヴィがすぐに質問する。
「じゃあディグバさんは、自分で作った物を壊す為にゾンビになったのか?」
「そうかもしれない、分からないけど。別に信じたくなかったら、信じてくれなくてもいい」
「じゃあ……その話が本当だったら、ナユさんっていう架空の人物を創った理由は何ですか?」
スノフォもリヴィと同じで、声の調子は変わっていなかった。
「何か理由があって、ディグバは悪者のふりをした。そうしたら、その悪に対する存在を創らないといけない。だから適当な設定でナユっていう架空の人物を創り出した。その架空の人物を創り出したのはディグバかこの世界か、分からないけどね」
「……何故あなたがそんなことを知っているんですか?」
リヴィは興味がありそうな顔をしながら質問した。
「……雷の鍵を受け継いでいるからよ。
この建物を造って、鍵をここに隠した私の先祖はディグバに仕えていた。それだけ」
「なるほど」
そう言ったリヴィは、腰にあるホルスターに手を伸ばす。
「あなた達の話を聞かせてもらっていいかしら?」
「傷つけ合う勝負の後なら」
スノフォが微笑みながら答えた。
「理由は何?」
「それも、勝負が終わったら」
「死んでしまったら言うことも聞くことも出来ないわよ?」
「その心配は無いです。私達は、戦いでは死にませんよ」
「……あははっ。百パーセントの自信はある?」
「どうでしょうね? この世の中で百パーセントだなんてありえませんからね」
「……そうね。私が言ったことも嘘かもしれないし、あの鍵も偽物かもしれない」
ノタが笑顔のままで、続けて言う。
「じゃあ……準備はいいかしら? ほら、あなたも。よろしくね」
「……はい。お嬢様」
そう言ったノタのガードマンも、腰にあるホルスターに手を伸ばす。
ノタはヒドウに向かって走り出した。いつの間にか、短剣を右手に握っている。ヒドウは恐怖心で後ずさる。
ノタの短剣は空を切る。ヒドウは小走りになりながらも、よけることは出来た。
その間にスノフォは人の姿から、馬のような姿に変わった。
スノフォは速さのある水の塊をノタにぶつける。
その水の勢いで、ノタの手から短剣がすべり落ちた。
「びっくりした……」
自分にしか聞こえない小声でノタがつぶやく。それから右手で短剣を拾うと左手の手のひらを、スノフォに向けた。
時計らしき物がスノフォにまとわりついている。それを見たスノフォはノタに質問した。
「あなたの得意な時空魔法の、一つをかけましたね? 時間の流れを遅くする魔法を」
「ええそうよ。でもお口は遅くなってないけどね」
ノタは続けて、笑い声で言う。
「あなたの動きを完全に封じ込めちゃったら、戦いが楽しめなくなるでしょ? だから動きを遅くするだけにした。今、剣と盾を持っている子は……ねぇ?」
ヒドウにノタが笑みを見せる。
「あなたは――――」
そう言ったリヴィは、ノタのガードマンに銃口を向ける。
ガードマンもリヴィに銃口を向けて口を開く。
「何?」
「ノタさんのガードマンになったのはいつですか?」
「……何年前だろう、まあ最近かな。それがどうしたの?」
「俺の知っている人に、あなたと似ている人が居るんですよ。
その人と最後に会ったのは、どっちかと言えば最近なんです。何年か前ですけど。同一人物だという確かな証拠はありませんけどね」
「俺達のようにこんな奥まで来る人はいない、と」
「そう。それで偶然、私がここに来た時間とあなた達が来た時間が被った」
そう言った女の人は続けて自分の名前をノタと名乗る。隣に居るのはガードマンだと言った。ヒドウ達の四人も自分の名前を言う。
ヒドウが剣と盾をノタに見せて、緊張している声で言った。
「この部屋に入る前、これらがあったんですけど何故あんな場所に?」
「ああ……その二つ? 適当に置いておいただけ。その二つは、雷の鍵を守ってきた人がずっと使ってきた物。でも私は時空魔法が使えるし、剣よりもこっちの短剣のほうが気に入っている。だから別に持っていっても構わない。雷の鍵を手に入れてからだったらね」
それを聞いたガードマンがノタに言う。
「お嬢様……!」
「何?」
「あれらも、鍵と一緒に受け継いできた物では……」
「いいのよ、もし鍵が無くなってしまうのだったら後はどうでもいい、私は使わないし」
「そう言われましても……」
「要らない物はどうなってもいいじゃない」
「……はい」
「そこの四人さん、面白い話でも聞く?」
ノタが楽しそうな、柔らかい顔で質問する。
スノフォとイニが同じような顔で質問に答えた。
「聞きたいですね」
ノタは少し、いきいきとした表情で喋り始める。
「――――――ナユさんはこの世界にはいなかった。存在していなかった。どういう経緯かは知らないけど、ディグバさんは悪者だという設定でこの世界に居る。あの扉を創ったのはディグバさんで、鍵を創ったのもディグバさん。あの扉を壊そうとしているのもディグバさん。理由は分からないけどね」
リヴィがすぐに質問する。
「じゃあディグバさんは、自分で作った物を壊す為にゾンビになったのか?」
「そうかもしれない、分からないけど。別に信じたくなかったら、信じてくれなくてもいい」
「じゃあ……その話が本当だったら、ナユさんっていう架空の人物を創った理由は何ですか?」
スノフォもリヴィと同じで、声の調子は変わっていなかった。
「何か理由があって、ディグバは悪者のふりをした。そうしたら、その悪に対する存在を創らないといけない。だから適当な設定でナユっていう架空の人物を創り出した。その架空の人物を創り出したのはディグバかこの世界か、分からないけどね」
「……何故あなたがそんなことを知っているんですか?」
リヴィは興味がありそうな顔をしながら質問した。
「……雷の鍵を受け継いでいるからよ。
この建物を造って、鍵をここに隠した私の先祖はディグバに仕えていた。それだけ」
「なるほど」
そう言ったリヴィは、腰にあるホルスターに手を伸ばす。
「あなた達の話を聞かせてもらっていいかしら?」
「傷つけ合う勝負の後なら」
スノフォが微笑みながら答えた。
「理由は何?」
「それも、勝負が終わったら」
「死んでしまったら言うことも聞くことも出来ないわよ?」
「その心配は無いです。私達は、戦いでは死にませんよ」
「……あははっ。百パーセントの自信はある?」
「どうでしょうね? この世の中で百パーセントだなんてありえませんからね」
「……そうね。私が言ったことも嘘かもしれないし、あの鍵も偽物かもしれない」
ノタが笑顔のままで、続けて言う。
「じゃあ……準備はいいかしら? ほら、あなたも。よろしくね」
「……はい。お嬢様」
そう言ったノタのガードマンも、腰にあるホルスターに手を伸ばす。
ノタはヒドウに向かって走り出した。いつの間にか、短剣を右手に握っている。ヒドウは恐怖心で後ずさる。
ノタの短剣は空を切る。ヒドウは小走りになりながらも、よけることは出来た。
その間にスノフォは人の姿から、馬のような姿に変わった。
スノフォは速さのある水の塊をノタにぶつける。
その水の勢いで、ノタの手から短剣がすべり落ちた。
「びっくりした……」
自分にしか聞こえない小声でノタがつぶやく。それから右手で短剣を拾うと左手の手のひらを、スノフォに向けた。
時計らしき物がスノフォにまとわりついている。それを見たスノフォはノタに質問した。
「あなたの得意な時空魔法の、一つをかけましたね? 時間の流れを遅くする魔法を」
「ええそうよ。でもお口は遅くなってないけどね」
ノタは続けて、笑い声で言う。
「あなたの動きを完全に封じ込めちゃったら、戦いが楽しめなくなるでしょ? だから動きを遅くするだけにした。今、剣と盾を持っている子は……ねぇ?」
ヒドウにノタが笑みを見せる。
「あなたは――――」
そう言ったリヴィは、ノタのガードマンに銃口を向ける。
ガードマンもリヴィに銃口を向けて口を開く。
「何?」
「ノタさんのガードマンになったのはいつですか?」
「……何年前だろう、まあ最近かな。それがどうしたの?」
「俺の知っている人に、あなたと似ている人が居るんですよ。
その人と最後に会ったのは、どっちかと言えば最近なんです。何年か前ですけど。同一人物だという確かな証拠はありませんけどね」
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